杞憂の次

ゲームの感想とか書く

【会話】をする

この記事は今年プレイしたゲーム Advent Calendar」16日目の記事です。

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みんなアンドロイドと人の関係性好き? ぼくは好き。

エクス・マキナとかイヴの時間とかもう見た? そう。ベイマックス? 見てない……

ぼくは『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』に出てくるAcaciaが好き。

 

さて、アンドロイドと人の関係性が好きなみんなにこんなゲームだ。

 

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『Glare1 more』(以下『1』『1 more』)

 

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『Glare2』(以下『2』)

 

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『Glare3』(以下『3』)

 

今回は3本まとめて。

まず、『3』は現在18禁しか存在しないので注意して欲しい。一作目と二作目に関しては、製作者がサイトで全年齢版を公開しているのでそちらで楽しめる(そもそも『2』は全年齢向けしか存在しない)(R化の予定はあるらしいので待ってます……)

但し、全年齢版の『1』は初期バージョンである『Glare1』の全年齢化であり、『Glare1』のリメイク版である『1 more』とは演出が異なるので留意されたし。具体的に言うと、『1 more』ではグレアさんがLive2Dでぬるぬる動く。あとは難易度調整やちょっとしたワードの追加、あとはミニシナリオの追加など。

まあR版『1 more』や『3』もそういうシーンは最後にまとめてあるだけの上『3』に至ってはシーンに入るかどうか任意選択なのでそういうシーンはあんまりなぁ……という方にも安心。でもシーンはまとめてある分滅茶苦茶濃いよ。

以下、

 

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ゲームの内容に入ろう。

このゲームは、主人公である「あなた」の家に突然アンドロイドの「グレア」が配送されるところから始まる。

 

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購入した覚えのない主人公とそんな主人公に気を許してくれないグレア。二人の関係性は会話を重ねることで徐々に変化していく――というのが、このゲームの(まずは1の)ストーリーだ。

 

このゲームはいわゆるノベルゲームであるが、選択肢は存在しない。それではどのようにゲームを進めるか。

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【会話】である。

正確に言えば、以前までの会話から単語をピックアップしてキーワード欄にタイプ。リスト内にあればそれに対応した会話が発生し、存在しなければそれきり……というものだ。

 

例を挙げよう。

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彼女からこのようなセリフを聞いた。この中から「ナノコロナ」という単語に注目してみる。

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ビンゴ。ここから更にキーワードを探していき、シナリオを進めていくのだ。まさに、現実でもよくあるような会話のキャッチボールである。もちろん、そのセリフから何の進展も発生しないことがある。現実だって同じで、全ての会話に意味があるとは限らない。その見分け方やキーワードの見つけ方をぼくは未だに分からない。

主人公の後ろに存在するシナリオライターから提示される2択ではない、プレイヤー自身の掴み取る無限の可能性がそこには存在する。この瞬間、ゲームをプレイしているぼくは、グレアと能動的に会話をしているのだ。……まあ、もちろんゲームという性質上、リストにない単語はバッサリと切り捨てられてしまうのだが。

 

このシステムは演出的にも強い。『1more』の最終部分、プレイヤーはある単語の入力を求められるのだが、これが択一式ではなく、ストーリーを思い返し考えた上で膨大な会話の中から選び取り打ち込んだ単語であるからこそ、それが認証された際のカタルシスが大きい。

 

ぼくはこのシステムに『Her Story』を感じた。もちろんゲームの内容自体は全く違うのだが、これまでの展開から次の単語を選び、それを入力することで次の展開を生み出していくという方向性には共通したものがあるのではないかと思う。違いとしては、自分でキーワードを考えていく未来向きの『Her Story』に対してこれまでの会話からキーワードを選んでいく過去向きの『Glare』というところだろうか。このあたりはぼくの勝手な感覚なので無視して構わない。

 

もちろん、この「単語を自由に記入していく」システム、候補が大量にあるために難易度が非常に高い。メインシナリオの進行にはイベント発生のフラグを立てる必要もあり、目的となる文章を手に入れるためにはまさに大量のキーワード候補を篩にかけていく必要がある。ややもすると新たなシナリオを読むより前のセリフを読み直し次のシナリオに進めそうなキーワードを片っ端から打ち込んでいく時間のほうが長くなるかもしれない。メインシナリオに関わらない部分のキーワードまで探そうとすると膨大な時間が経過していく。更にこのキーワード、一単語とは限らない。形容詞などまで含めて考えていく必要があるのだ。

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これは『3』のキーワード集だ(キーワードはモザイク処理してある)。会話群の中には、メインシナリオとサブシナリオを合わせて最終的に97個のキーワードが存在する。ぼくは残り一個未だに見つかっていない。

……なので、真にゲームに詰まったら攻略サイトでも探してみるといいかもしれない。ぼく自身は推奨しないが、まあ。

 

 

ストーリーに関してだが、非常に濃い。もしかするとこのビジュアルから(どうせアンドロイド要素はフレーバー程度のライトないちゃらぶちゃぷちゃぷ浅瀬ストーリーなのでは?)と思う方もいるかも知れない。

大間違いだ。間違えた人はペナルティとして『1』のDLが課されます。

このゲームのシナリオは非常に濃い。そしてSF作品として非常にクオリティが高い。強いSFだ。そして緻密に伏線が張られたストーリー。あと『そういう』シーンのクオリティもしっかり高い。

『彼女はアンドロイドであり、高度な人工知能が搭載されている』

この設定が、きちんと全ての作品の核にある。

 

この『Glare』世界において、アンドロイドに人権はない。所謂冷蔵庫や電子レンジ――即ち家電に近い。しかし、人造人間である彼女の体は彼女に人間と似た振る舞いをさせ、彼女の人工知能は彼女に一人の少女であるかのような言動をさせる。

彼女自身も、自分が一台のアンドロイド・家電・商品であるという認識と、自分がまるで一人の少女であるかのような認識の二つを持ち合わせている。

そして彼女は悩むのだ。

 

『1』において、彼女は主人公とともに主人公の家に送られてきた理由を探す。その過程で彼女は様々なことを知ることになる。

『2』において、彼女は主人公との一時のバカンスを楽しむ。しかし、彼女の発する謎の寝言の正体を探るために、彼女は自分の根源について調べることになる。

『3』において――これ以降は、『1』や『2』の物語が密接に絡むため簡単に言うことはできない。しかし、彼女はこれまでの3つのストーリーのまとめとも言える大きな問題にぶつかることになるのだ。

 

一つ一つのストーリーは緻密であり、濃く重いSFだが、SFという単語ををぶつけられて困惑しているSFに自信のない諸兄もいるだろう。そんな諸兄に朗報だ。

 

グレアは、非常に、かわいい。

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かわいいのだ。

さっきのグレアと雰囲気が違う? 気のせいだ。

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かわいいのだ。

 

メイド風アンドロイドなのに、料理が下手だし、性能は高くないし、知識も一々調べなければならない程度だ。

でもそんなところがかわいいのだ。

 

一人の女の子として、ただただ、かわいいのだ。

 

覚えておいて欲しい。

女の子として、かわいい。

 

グレアがかわいいという気持ちさえあれば、このゲームを進めていくことができる。

そして一つのゲームを終わらせたとき、諸兄は次のゲームへ進みたくなるだろう。

 

ぼくは『1』で感動したし『2』で絶望したし『3』で号泣したよ。

 

 

最後に、BGMのことについて話そう。このゲームには一部のシーンを除いてBGMがない。手抜きに見えるだろうか?

考えてみよう。我々の生きている現実世界にBGMは存在するだろうか?

常に同じ曲が耳元で流れ続ける世界、それこそホラーではないか?

特に『1』において、BGMが存在しない理由ははっきりわかる。静かでなければならない必然性だ。

 

 

とにかく、このゲームは名作だ。あらゆる人類にやってほしい。グレアの悩みを、そして答えを、聞いてほしいのだ。この『Glare』の世界において、彼女しか持ちえない悩みを。彼女と、そして主人公がいるからこその答えを。

そしてぼくは『4』を待ち続けているのでよろしくお願いします。

あと『2』のR化待ってます。

 

 

クレナイブック(作者ホームページ)

 

もっと書きたいけどネタバレになるから書けない……やってる人と話したい……だからやって……