杞憂の次

ゲームの感想とか書く

【行動】をする

この記事は今年プレイしたゲーム Advent Calendar」17日目の記事です。

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君は意思を持ったアンドロイドが好きか? ぼくは好きだ。

ブレードランナーとかアイ,ロボットはもう見たか? そうか。ロボコップ? 見てない。

ぼくは『魂の駆動体』に出てくるアンドロギアが好きだ。

 

さて、意思を持ったアンドロイドが好きな君にこれだ。

 

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『Detroit: Become Human』

 

 

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時は2038年。アメリカのデトロイトではロボット工学が発展し、街にはアンドロイドが溢れかえっていた。

 

人間と同等の外見や知能を持ち、人の仕事を代わりに担うようになった彼らは最早人間に不可欠だ。一方で人間の失職率はこれまでにない高い数値を見せ、アンドロイドへ反感を持つ人々も増加した。

 

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モノとして扱われるアンドロイド。そんな中、意思を持たないはずの彼らの中に、意思や感情を持っているかのように振る舞う個体、「変異体」が発生する。

 

彼らの「意思」「感情」は本物か。そして彼ら変異体、そしてアンドロイドに人間はどう対処すべきなのか。――激動の一週間が始まる。

 

 

コチャコチャ言ったが、まあ早い話アンドロイドが意思を持って人間とガチャガチャやりあったりやられあったりする話だ。

 

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まずは、君の操るアンドロイド三人について簡単に説明しよう。

 

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「マーカス」、このデトロイトという都市を直接的に介入していくキャラクターだ。

彼はもともと画家の老人と平穏な日々を過ごしていた一アンドロイドだった。彼は一人と一体という穏やかな生活を過ごし、不満のない日常を過ごしていた。しかしある時、とある事件を契機に廃棄され、そこから変異体グループの実質的リーダーへと変わっていくのだ。

物語の中で社会を揺るがすような事件を起こすのは常にこいつだ。変異体グループ、つまり反人間サイドのリーダーである彼は、デトロイトという街の未来を決めるアンドロイドの一体なのだ。

 

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「コナー」、このアンドロイドはマーカスの真逆の存在だ。警察の捜査用に作られた特殊なアンドロイドであり、変異体を追うために実戦配備された初の個体である。彼はアンドロイド嫌いのアル中警察官「ハンク」とバディを組み、変異体捜査を追ったり撃ったりしていく(アンドロイドとアンドロイド嫌いの警官のコンビがアンドロイド事件を追うというこの筋書きは、トゥーンであるロジャーとトゥーン嫌いの探偵エディがトゥーン関連の事件を追うロジャー・ラビットのそれに似ている)。マーカスとは逆方向からこのデトロイトという街の行く末を左右する、彼もまた重要なアンドロイドの一体なのだ。

ちなみにこいつのバックには企業と公権力がついているので一回死んでも次の章では新たなコナーがいる。神山博士かスクイーか。

 

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最後に「カーラ」だ。このアンドロイドはどのようにデトロイトという街で重要になるのか? ……カーラは重要とは言えない。このアンドロイドには変異体をまとめるリーダーシップもなければ、警察官として変異体を追う立場も持たない。ただ少女を連れてデトロイトを逃げ惑う、一体のアンドロイドだ。

彼女はデトロイトの街に影響を与えない。彼女一体が死んだところでこの街の大勢に影響はない。カーラはコナーにとって追うべき異変体の一体にすぎないし、マーカスにとってはたくさんいる異変体という同族のうちの一体でしかない。彼女はただ人間から逃げ、安住の地を探す。しかし、だからこそ君はカーラの行く末に注目し、コントローラを握る手に力が入るだろう。デトロイトを覆う嵐にただ翻弄される存在。それがこのカーラなのだ。

 

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 この物語は群像劇だ。

数多くのアンドロイド、そして数多くの人間によってこの物語は動く。しかし、この群像劇を真に動かしていくのは、このゲームの三体の主人公、「コナー」「カーラ」「マーカス」――つまり、このゲームをプレイする君に他ならない。

 

例えば、君はマーカスを操っている。君はある時、人間を目の前にする。人間は逃げようとしており、君は銃を持っている。君の前にはこんな選択肢がある――

▶殺す

▶見逃す

それを決めるのは君だ。もし殺せば、マーカスたち変異体の社会からの目線は冷たくなるだろう。しかし、殺さなければ逃げた人間は警察に逃げ込み、マーカスたちのことを通報するに違いない。

これを決めるのは君だ。

そして、この二種類の選択肢それぞれに、シナリオが用意されている。

 

君の行動は物語に直結するのだ。

 

こういった分岐は数箇所ではない。ゲームを区切る「章」、その中でも大量に用意されている。殺す/殺さないといった大きなものから、どこに寝る、相手に何を聞く、どこを探る、それぞれに分岐が発生するし、そういった小さな分岐が後半で大きな分岐につながることもある。

 

そして、一番大きな分岐が「キャラクターの死」だ。この物語に出てくるキャラクターたちは、死ぬ。君がそういうふうに選べば、そう意図しなくとも重要な場面で操作を間違えれば、君の操作するキャラクターは死ぬ。

操作キャラクターが死ぬとどうなるか? ……どうにもならない。物語は進む。死んだキャラクターが蘇ることはない(コナーを除く)し、死んだというシナリオのもと淡々と進んでいく。

 

それではエンディングとは一体なんだろう。死さえもエンディングでないとは?

この物語のエンディングは、『誰か一人が結末へ到達した時』ではなく、『このデトロイトという街の特定の日時』なのだ。だから、物語の終了時点で君の操作する三体が全て死亡していることだってある。実際ぼくの一周目はそうだった。

 

この世界、誰か一人が死に、どれか一つのイベントをこなせなかっただけで破綻してしまうようなやわな世界ではないのだ。

 

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実際のところ、このゲームのストーリーの部分部分に既視感を覚えることがあるかもしれない。

まあ過去のSFで既に使われている題材も含まれていたりするのだ。だからつまらないという訳でもなく、しっかり一ストーリーとして面白いのだが。

このゲームがその上で更に一線を画しているのは、プレイヤーの感じる臨場感だ。

 

「選択肢」というワードを上で出した。これにもう一つワードを足そう。この選択肢、ほとんどの場面で時間制限が存在するのだ。

考えてみて欲しい。現実世界で逃げている人間を撃つか撃たないか考えるのに一分も二分もかけるだろうか? 人と会話するのに、次の会話まで五分も十分も黙りこくることがあるだろうか? ほとんどの選択に時間制限があるからこそ、君は焦るし、その焦りが物語への臨場感を与える。

 

もう一つ、このゲームに特徴的な点がある。このゲームと言うより、このゲームの開発であるクアンティック・ドリームの他の作品にも言えることだが、ほぼ全ての行動にコマンド操作が求められるのである。

冷蔵庫を開けたい? なら右スティックを左方向に倒すんだ。

段差の上に登る? だったらコントローラを上に振ろう。

ハッキングしたい? それは難しい。まずはL1とR1を同時に押し、その後△ボタンを連打して……

と、こんな風だ。画面上に表示される操作を行い、それが正しく行えれば行為ができるし、行えなければ失敗する。一部の操作にはこれまた時間制限が発生し、失敗したり時間内に出来ないと話が悪い方向に進んだり最悪死んだりする。

このアクション性が最初は煩雑に感じるだろう。しかし、慣れてくるとただボタンを押すよりはるかに没入感を感じられるようになる。「自分が動かしている」という感覚がどんどん強くなるのだ。

 

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細かいストーリーの展開についてだが、詳しくは語れない。

ネタバレが多いというのもあるが、何よりぼくのストーリーと君のストーリーが同じものとは限らないからだ。

上でも言っているように様々な分岐があるこの物語。どのようなストーリーを進んだかは各プレイヤーごとに全く異なる。誰が生きていて誰が死んだのか、どのような結末を迎えたか、だけではない。それがどのような過程でそうなったかが違う。どのような感情を抱いてそれぞれの動作に至ったか、プレイヤーごとに捉え方が異なることだってある。

君のクリアした『Detroit: Become Human』、それは君だけの『Detroit: Become Human』なのだ。

 

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