もうすぐ終わってしまう君へ
この記事は「今年プレイしたゲーム Advent Calendar」19日目の記事です。
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「がんばれゴエモン ~ビーストメドレー~」
「Twinbee's Home Town Song」
これはとあるゲームに収録されている楽曲の一部である。悪魔城ドラキュラ、がんばれゴエモン、ツインビー……どれも、コナミの誇る往年の名作ゲームだ。
こんな楽曲を収録するゲーム、一体何のゲームだと思うだろうか。ギタドラみたいな音楽ゲーム? それともコナミワイワイワールドみたいな多作品出演のお祭りゲーム? そのどちらでもない。
このゲームはアイドルゲームだ。それも、かの名作シリーズのタイトルを冠した。
『ときめきアイドル』
2018年3月20日に運営を開始した、コナミの誇るアイドル育成ゲームだ。
……そして、このゲームは既に、2019年1月でのサービス終了が告知されている。
ぼくがこのゲームと出会ったのは、3月20日――つまり、サービス開始時だ。
「起動時にバブルシステムが流れる」※バブルシステムという昔の基盤を起動するときに流れるやつだ
「ホーム画面でアイドルたちがグラディウスをプレイし始める」
「将来の夢が『グラディウスの続編を作ってもらう』のアイドルがいる」
実際気が狂っていると思った。いや、このアイドルゲーム群雄割拠の時代に個性を持つのは大事だと思うけど個性の出し方があんまりじゃないか? まあ自社のIPを有効活用していく姿勢は嫌いじゃない。桃鉄の新作はまだです? 一応ポップンやらノスタルジアやらミライダガッキやらでコナミに貯金している身としてはプレイしてみないとな……と思った次第だ。まあ公式サイトで見た立川美翠ちゃんに惹かれたというのもある。立川美翠ちゃん、双子の姉を持つしっかりものの中学3年生だ。
で、始めた……という訳でもない。ぼくのおんぼろスマホがアプリに対応していなかったため始められなかったのだ。
ぼく、スマホの購入を決意する。
ちょうど画面がバキバキだったり古くなっていたりで変えようかな……とは思っていたが、結構な一押しにはなった。
4月4日、ぼくのスマホの購入日にしてときめきアイドルを始めた日である。
ちょうど猫のイベントだっただろうか。イベント終了間近でほとんど遊べていないが。ギリギリのすべりこみで立川姉妹二人分と何人かの報酬だけ獲得した覚えがある。
このゲーム、イベント報酬で服装やポースが配られることが多い。所謂キャラクターの着せ替え要素である。アイドルを着せ替えると、アイドルがその服を着てライブをするところが見られたり、ホーム画面でその服を着てくれたりするのだ。
写真撮影もできる。ポーズを使うのはこの時だ。
始めて数日、ぼくはこのゲームがクセになっていた。起動ごとに流れるモーニングミュージック、服の名前のネタといった昔のコナミネタだけなら「手のこんだ一発ネタ」として、しばらくで飽きていただろう。しかし、このゲームはそれだけではないのだ。
まず、作り込みが丁寧だ。起動の待ち時間を飽きさせないために、キャラクターの掛け合いを表示してくれる(もちろん、BGMはモーニングミュージックだ)。ホーム画面のキャラクターは日常生活を楽しんでいて、タップすると反応してくれる。ネコ先輩(アイドルたちの暮らす寮で飼っているネコだ)の目線からアイドルを見ることもできる。ホーム画面でナビゲータとして一人アイドルを設定できるのだが、ちゃんと(ちゃんと?)アイドルにタッチできる。なんとVRにも対応しているので強い(試したことはない)。
そして曲がいい。とあるゲームのようにソロバージョンが指定できたりする訳ではないが、一曲一曲に魅力がある。音ゲーパートも、まあプレイ初期は難しい譜面こそなかったが、しっかりプレイして楽しい感じに作ってあるのだ。後ろで動くアイドルたちももちろんかわいい。
15人全員で行うライブや、直近の高スコアプレイを真似して勝手にプレイしてくれる機能なんかもある。
さらにストーリーもいい。数曲ごとに発生するコミュ、アイドルの好感度ごとに発生するメンバーストーリー、そしてアイドルのユニットごとに発生するガールズストーリー(これはプレイヤーレベル達成で解禁される)があるが、まあそれぞれ面白い。コミュは一緒に下校したり呼び名を変えてみるか迷ったりクイズを出されたり……クイズ? なんで? メンバーストーリーやガールズストーリーは親愛度やレベル依存のためそこまで頻繁に出会うことはないが、しっかりストーリーがある。
ぼくは立川朱音ちゃんのメンバーストーリー第六話が好き。
ああ、これが立川朱音ちゃん。しっかりした妹とは違ってすちゃらか(原文ママ)な双子の姉だ。天才タイプのアイドルで、苦手なものは努力だと語る。ただ、レッスンの時はきちんと取り組むし、グデるための努力はちゃんとする。ただ、自分が努力している姿を他の人に見られるのがイヤだ……というなんともかわいい子なのだ。趣味はスマホゲームと麻雀。コミュではプロデューサー(プレイヤー)と麻雀で遊ぶ姿も見かけられる。
見てるだけでかわいいんだよなぁ?
しっかり者の妹とものぐさな姉って、いい。ちゃんと仲良くて、いい。
朱音は「自慢の妹!」なんて言うし、美翠は「ちゃんと掃除してるかな…」なんて言ってる。すごくいい。
いい。
メンバーストーリーはまだ全員最後の一話が未実装。その名前は「Forever with you」。……ときメモじゃねぇかって突っ込んだけどそういえば「ときめき」アイドルなんだよなぁ……
さっきも言ったが、曲がいいのだ。音ゲーマーならみんな大好きL.E.D.の楽曲だって入っている。ハードコアではないです
Sota Fujimoriの楽曲もある。
ぼくは「冒険デイズ」と「カン違いSummer Days (青山つばさver.)」が好き。まあ後者はCD限定なんだけどね!
ゲーム内ではイベントもあったが……イベントのことは語らないでおこう。まあ、なんというか、余りに普通というか、虚無と言うか……まあ、さっして……。
まあ、そんな感じでぼくは楽しんでいたし、立川姉妹と伊澄いずみちゃん(これを考えた人間は徹夜続きで頭が変になっていたんだろうか)をトップアイドルにしようと日々絆を深めていたわけだ。
そして、ゲーム終了のお知らせが入る。
一体何がダメだったのか。確かにイベントを見る限りプレイ人数は他の「売れている」アイドルゲームと比べて芳しくなかった。プロモーションが下手だったのか? 昔のゲームネタが濃すぎて知らないプレイヤーには魅力的に見えなかったのか? 「丁寧」が余りに丁寧で逆に普通にしかならなかったのか? ぼくは「プレイしている」側なので、プレイしていないユーザーが何故プレイしていなかったのかは想像し難い。まあ、プレイしている側のぼくとしても不満はあった。
「文章がもっと欲しかった」。ストーリーである。コミュやストーリーがあるというのは上で書いた。イベントごとにも一応ストーリーはあった。しかし、15人という最近のアイドルゲームとしては少なめの人数である。もっとストーリーは増やせなかっただろうか? おそらく、プレイしている誰もがきちんとやれば必ず読める、というのを想定していたのだろう。イベントストーリーはイベントポイントを稼げば読めるし、ガールズストーリー・メンバーストーリーもプレイヤーのレベル上げ・アイドルの好感度上げをすればいつかは読めた。しかし、それだけでは何だかぼくにとって薄かったのだ。
大体のゲームでよくある「カードにストーリーを付ける」方式を取り入れても良かったんじゃないかとは思う。もうちょっとメンバーストーリーの話数を増やしても、もうちょっとガールズストーリーを増やしてくれても……まあ、サービス終了が予告された以上、ここから追加されるのはいくつかのイベントストーリーと「Forever with you」くらいである。高望みはしない。
そもそもオフラインアプデートしてくれるだけでも恵まれている気がする。何だかんだ言って、結局ぼくはこれまでおよそ9ヶ月プレイしてきたし、多分1月以降のオフラインアップデート後もアイドルたちとの「Forever with you」を求め、そして見てからもアンインストールしないでたまに起動し、何曲かプレイしてアイドルのコミュを見て……というのを続けるだろう。ポップンでたまに恋のパズルマジックなんかを選曲してしばしばエモい気持ちになったりもするのだろう。
まあ、そんな感じだ。
もうちょい欲を言えば恋愛観測カバーとか欲しかった感はある。
【行動】をする
この記事は「今年プレイしたゲーム Advent Calendar」17日目の記事です。
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君は意思を持ったアンドロイドが好きか? ぼくは好きだ。
ブレードランナーとかアイ,ロボットはもう見たか? そうか。ロボコップ? 見てない。
ぼくは『魂の駆動体』に出てくるアンドロギアが好きだ。
さて、意思を持ったアンドロイドが好きな君にこれだ。
『Detroit: Become Human』
時は2038年。アメリカのデトロイトではロボット工学が発展し、街にはアンドロイドが溢れかえっていた。
人間と同等の外見や知能を持ち、人の仕事を代わりに担うようになった彼らは最早人間に不可欠だ。一方で人間の失職率はこれまでにない高い数値を見せ、アンドロイドへ反感を持つ人々も増加した。
モノとして扱われるアンドロイド。そんな中、意思を持たないはずの彼らの中に、意思や感情を持っているかのように振る舞う個体、「変異体」が発生する。
彼らの「意思」「感情」は本物か。そして彼ら変異体、そしてアンドロイドに人間はどう対処すべきなのか。――激動の一週間が始まる。
コチャコチャ言ったが、まあ早い話アンドロイドが意思を持って人間とガチャガチャやりあったりやられあったりする話だ。
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まずは、君の操るアンドロイド三人について簡単に説明しよう。
「マーカス」、このデトロイトという都市を直接的に介入していくキャラクターだ。
彼はもともと画家の老人と平穏な日々を過ごしていた一アンドロイドだった。彼は一人と一体という穏やかな生活を過ごし、不満のない日常を過ごしていた。しかしある時、とある事件を契機に廃棄され、そこから変異体グループの実質的リーダーへと変わっていくのだ。
物語の中で社会を揺るがすような事件を起こすのは常にこいつだ。変異体グループ、つまり反人間サイドのリーダーである彼は、デトロイトという街の未来を決めるアンドロイドの一体なのだ。
「コナー」、このアンドロイドはマーカスの真逆の存在だ。警察の捜査用に作られた特殊なアンドロイドであり、変異体を追うために実戦配備された初の個体である。彼はアンドロイド嫌いのアル中警察官「ハンク」とバディを組み、変異体捜査を追ったり撃ったりしていく(アンドロイドとアンドロイド嫌いの警官のコンビがアンドロイド事件を追うというこの筋書きは、トゥーンであるロジャーとトゥーン嫌いの探偵エディがトゥーン関連の事件を追うロジャー・ラビットのそれに似ている)。マーカスとは逆方向からこのデトロイトという街の行く末を左右する、彼もまた重要なアンドロイドの一体なのだ。
ちなみにこいつのバックには企業と公権力がついているので一回死んでも次の章では新たなコナーがいる。神山博士かスクイーか。
最後に「カーラ」だ。このアンドロイドはどのようにデトロイトという街で重要になるのか? ……カーラは重要とは言えない。このアンドロイドには変異体をまとめるリーダーシップもなければ、警察官として変異体を追う立場も持たない。ただ少女を連れてデトロイトを逃げ惑う、一体のアンドロイドだ。
彼女はデトロイトの街に影響を与えない。彼女一体が死んだところでこの街の大勢に影響はない。カーラはコナーにとって追うべき異変体の一体にすぎないし、マーカスにとってはたくさんいる異変体という同族のうちの一体でしかない。彼女はただ人間から逃げ、安住の地を探す。しかし、だからこそ君はカーラの行く末に注目し、コントローラを握る手に力が入るだろう。デトロイトを覆う嵐にただ翻弄される存在。それがこのカーラなのだ。
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この物語は群像劇だ。
数多くのアンドロイド、そして数多くの人間によってこの物語は動く。しかし、この群像劇を真に動かしていくのは、このゲームの三体の主人公、「コナー」「カーラ」「マーカス」――つまり、このゲームをプレイする君に他ならない。
例えば、君はマーカスを操っている。君はある時、人間を目の前にする。人間は逃げようとしており、君は銃を持っている。君の前にはこんな選択肢がある――
▶殺す
▶見逃す
それを決めるのは君だ。もし殺せば、マーカスたち変異体の社会からの目線は冷たくなるだろう。しかし、殺さなければ逃げた人間は警察に逃げ込み、マーカスたちのことを通報するに違いない。
これを決めるのは君だ。
そして、この二種類の選択肢それぞれに、シナリオが用意されている。
君の行動は物語に直結するのだ。
こういった分岐は数箇所ではない。ゲームを区切る「章」、その中でも大量に用意されている。殺す/殺さないといった大きなものから、どこに寝る、相手に何を聞く、どこを探る、それぞれに分岐が発生するし、そういった小さな分岐が後半で大きな分岐につながることもある。
そして、一番大きな分岐が「キャラクターの死」だ。この物語に出てくるキャラクターたちは、死ぬ。君がそういうふうに選べば、そう意図しなくとも重要な場面で操作を間違えれば、君の操作するキャラクターは死ぬ。
操作キャラクターが死ぬとどうなるか? ……どうにもならない。物語は進む。死んだキャラクターが蘇ることはない(コナーを除く)し、死んだというシナリオのもと淡々と進んでいく。
それではエンディングとは一体なんだろう。死さえもエンディングでないとは?
この物語のエンディングは、『誰か一人が結末へ到達した時』ではなく、『このデトロイトという街の特定の日時』なのだ。だから、物語の終了時点で君の操作する三体が全て死亡していることだってある。実際ぼくの一周目はそうだった。
この世界、誰か一人が死に、どれか一つのイベントをこなせなかっただけで破綻してしまうようなやわな世界ではないのだ。
〜〜〜〜
実際のところ、このゲームのストーリーの部分部分に既視感を覚えることがあるかもしれない。
まあ過去のSFで既に使われている題材も含まれていたりするのだ。だからつまらないという訳でもなく、しっかり一ストーリーとして面白いのだが。
このゲームがその上で更に一線を画しているのは、プレイヤーの感じる臨場感だ。
「選択肢」というワードを上で出した。これにもう一つワードを足そう。この選択肢、ほとんどの場面で時間制限が存在するのだ。
考えてみて欲しい。現実世界で逃げている人間を撃つか撃たないか考えるのに一分も二分もかけるだろうか? 人と会話するのに、次の会話まで五分も十分も黙りこくることがあるだろうか? ほとんどの選択に時間制限があるからこそ、君は焦るし、その焦りが物語への臨場感を与える。
もう一つ、このゲームに特徴的な点がある。このゲームと言うより、このゲームの開発であるクアンティック・ドリームの他の作品にも言えることだが、ほぼ全ての行動にコマンド操作が求められるのである。
冷蔵庫を開けたい? なら右スティックを左方向に倒すんだ。
段差の上に登る? だったらコントローラを上に振ろう。
ハッキングしたい? それは難しい。まずはL1とR1を同時に押し、その後△ボタンを連打して……
と、こんな風だ。画面上に表示される操作を行い、それが正しく行えれば行為ができるし、行えなければ失敗する。一部の操作にはこれまた時間制限が発生し、失敗したり時間内に出来ないと話が悪い方向に進んだり最悪死んだりする。
このアクション性が最初は煩雑に感じるだろう。しかし、慣れてくるとただボタンを押すよりはるかに没入感を感じられるようになる。「自分が動かしている」という感覚がどんどん強くなるのだ。
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細かいストーリーの展開についてだが、詳しくは語れない。
ネタバレが多いというのもあるが、何よりぼくのストーリーと君のストーリーが同じものとは限らないからだ。
上でも言っているように様々な分岐があるこの物語。どのようなストーリーを進んだかは各プレイヤーごとに全く異なる。誰が生きていて誰が死んだのか、どのような結末を迎えたか、だけではない。それがどのような過程でそうなったかが違う。どのような感情を抱いてそれぞれの動作に至ったか、プレイヤーごとに捉え方が異なることだってある。
君のクリアした『Detroit: Become Human』、それは君だけの『Detroit: Become Human』なのだ。
【会話】をする
この記事は「今年プレイしたゲーム Advent Calendar」16日目の記事です。
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みんなアンドロイドと人の関係性好き? ぼくは好き。
エクス・マキナとかイヴの時間とかもう見た? そう。ベイマックス? 見てない……
ぼくは『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』に出てくるAcaciaが好き。
さて、アンドロイドと人の関係性が好きなみんなにこんなゲームだ。
『Glare1 more』(以下『1』『1 more』)
『Glare2』(以下『2』)
『Glare3』(以下『3』)
今回は3本まとめて。
まず、『3』は現在18禁しか存在しないので注意して欲しい。一作目と二作目に関しては、製作者がサイトで全年齢版を公開しているのでそちらで楽しめる(そもそも『2』は全年齢向けしか存在しない)(R化の予定はあるらしいので待ってます……)。
但し、全年齢版の『1』は初期バージョンである『Glare1』の全年齢化であり、『Glare1』のリメイク版である『1 more』とは演出が異なるので留意されたし。具体的に言うと、『1 more』ではグレアさんがLive2Dでぬるぬる動く。あとは難易度調整やちょっとしたワードの追加、あとはミニシナリオの追加など。
まあR版『1 more』や『3』もそういうシーンは最後にまとめてあるだけの上『3』に至ってはシーンに入るかどうか任意選択なのでそういうシーンはあんまりなぁ……という方にも安心。でもシーンはまとめてある分滅茶苦茶濃いよ。
以下、
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ゲームの内容に入ろう。
このゲームは、主人公である「あなた」の家に突然アンドロイドの「グレア」が配送されるところから始まる。
購入した覚えのない主人公とそんな主人公に気を許してくれないグレア。二人の関係性は会話を重ねることで徐々に変化していく――というのが、このゲームの(まずは1の)ストーリーだ。
このゲームはいわゆるノベルゲームであるが、選択肢は存在しない。それではどのようにゲームを進めるか。
【会話】である。
正確に言えば、以前までの会話から単語をピックアップしてキーワード欄にタイプ。リスト内にあればそれに対応した会話が発生し、存在しなければそれきり……というものだ。
例を挙げよう。
彼女からこのようなセリフを聞いた。この中から「ナノコロナ」という単語に注目してみる。
ビンゴ。ここから更にキーワードを探していき、シナリオを進めていくのだ。まさに、現実でもよくあるような会話のキャッチボールである。もちろん、そのセリフから何の進展も発生しないことがある。現実だって同じで、全ての会話に意味があるとは限らない。その見分け方やキーワードの見つけ方をぼくは未だに分からない。
主人公の後ろに存在するシナリオライターから提示される2択ではない、プレイヤー自身の掴み取る無限の可能性がそこには存在する。この瞬間、ゲームをプレイしているぼくは、グレアと能動的に会話をしているのだ。……まあ、もちろんゲームという性質上、リストにない単語はバッサリと切り捨てられてしまうのだが。
このシステムは演出的にも強い。『1more』の最終部分、プレイヤーはある単語の入力を求められるのだが、これが択一式ではなく、ストーリーを思い返し考えた上で膨大な会話の中から選び取り打ち込んだ単語であるからこそ、それが認証された際のカタルシスが大きい。
ぼくはこのシステムに『Her Story』を感じた。もちろんゲームの内容自体は全く違うのだが、これまでの展開から次の単語を選び、それを入力することで次の展開を生み出していくという方向性には共通したものがあるのではないかと思う。違いとしては、自分でキーワードを考えていく未来向きの『Her Story』に対してこれまでの会話からキーワードを選んでいく過去向きの『Glare』というところだろうか。このあたりはぼくの勝手な感覚なので無視して構わない。
もちろん、この「単語を自由に記入していく」システム、候補が大量にあるために難易度が非常に高い。メインシナリオの進行にはイベント発生のフラグを立てる必要もあり、目的となる文章を手に入れるためにはまさに大量のキーワード候補を篩にかけていく必要がある。ややもすると新たなシナリオを読むより前のセリフを読み直し次のシナリオに進めそうなキーワードを片っ端から打ち込んでいく時間のほうが長くなるかもしれない。メインシナリオに関わらない部分のキーワードまで探そうとすると膨大な時間が経過していく。更にこのキーワード、一単語とは限らない。形容詞などまで含めて考えていく必要があるのだ。
これは『3』のキーワード集だ(キーワードはモザイク処理してある)。会話群の中には、メインシナリオとサブシナリオを合わせて最終的に97個のキーワードが存在する。ぼくは残り一個未だに見つかっていない。
……なので、真にゲームに詰まったら攻略サイトでも探してみるといいかもしれない。ぼく自身は推奨しないが、まあ。
ストーリーに関してだが、非常に濃い。もしかするとこのビジュアルから(どうせアンドロイド要素はフレーバー程度のライトないちゃらぶちゃぷちゃぷ浅瀬ストーリーなのでは?)と思う方もいるかも知れない。
大間違いだ。間違えた人はペナルティとして『1』のDLが課されます。
このゲームのシナリオは非常に濃い。そしてSF作品として非常にクオリティが高い。強いSFだ。そして緻密に伏線が張られたストーリー。あと『そういう』シーンのクオリティもしっかり高い。
『彼女はアンドロイドであり、高度な人工知能が搭載されている』
この設定が、きちんと全ての作品の核にある。
この『Glare』世界において、アンドロイドに人権はない。所謂冷蔵庫や電子レンジ――即ち家電に近い。しかし、人造人間である彼女の体は彼女に人間と似た振る舞いをさせ、彼女の人工知能は彼女に一人の少女であるかのような言動をさせる。
彼女自身も、自分が一台のアンドロイド・家電・商品であるという認識と、自分がまるで一人の少女であるかのような認識の二つを持ち合わせている。
そして彼女は悩むのだ。
『1』において、彼女は主人公とともに主人公の家に送られてきた理由を探す。その過程で彼女は様々なことを知ることになる。
『2』において、彼女は主人公との一時のバカンスを楽しむ。しかし、彼女の発する謎の寝言の正体を探るために、彼女は自分の根源について調べることになる。
『3』において――これ以降は、『1』や『2』の物語が密接に絡むため簡単に言うことはできない。しかし、彼女はこれまでの3つのストーリーのまとめとも言える大きな問題にぶつかることになるのだ。
一つ一つのストーリーは緻密であり、濃く重いSFだが、SFという単語ををぶつけられて困惑しているSFに自信のない諸兄もいるだろう。そんな諸兄に朗報だ。
グレアは、非常に、かわいい。
かわいいのだ。
さっきのグレアと雰囲気が違う? 気のせいだ。
かわいいのだ。
メイド風アンドロイドなのに、料理が下手だし、性能は高くないし、知識も一々調べなければならない程度だ。
でもそんなところがかわいいのだ。
一人の女の子として、ただただ、かわいいのだ。
覚えておいて欲しい。
女の子として、かわいい。
グレアがかわいいという気持ちさえあれば、このゲームを進めていくことができる。
そして一つのゲームを終わらせたとき、諸兄は次のゲームへ進みたくなるだろう。
ぼくは『1』で感動したし『2』で絶望したし『3』で号泣したよ。
最後に、BGMのことについて話そう。このゲームには一部のシーンを除いてBGMがない。手抜きに見えるだろうか?
考えてみよう。我々の生きている現実世界にBGMは存在するだろうか?
常に同じ曲が耳元で流れ続ける世界、それこそホラーではないか?
特に『1』において、BGMが存在しない理由ははっきりわかる。静かでなければならない必然性だ。
とにかく、このゲームは名作だ。あらゆる人類にやってほしい。グレアの悩みを、そして答えを、聞いてほしいのだ。この『Glare』の世界において、彼女しか持ちえない悩みを。彼女と、そして主人公がいるからこその答えを。
そしてぼくは『4』を待ち続けているのでよろしくお願いします。
あと『2』のR化待ってます。
クレナイブック(作者ホームページ)
もっと書きたいけどネタバレになるから書けない……やってる人と話したい……だからやって……
I wanna be the cute girl
この記事は「今年プレイしたゲーム Advent Calendar」15日目の記事です。
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可愛い女の子を動かしたい。ので、このゲームをやる。
『Eryi's Action』
かわいい女の子が主人公みたいだ!
ストーリーもかわいいなぁ!
ゆるふわアクションできっと癒やされるんだろうなぁ!
…………は?(威圧)
エリィがファータに持っていかれたメロンを取り戻しに出かけるゲーム。
ちなみにファータはエリーが嫌いなわけではなくいたずらがしたいだけ、という設定。百合。
このストーリーのゆるふわ感に反してとにかく殺意に溢れたこのゲーム。上から針が降ってきたりブロックが唐突に動いたり何もないところから針が生えたりする。
いい加減にしろ。
あ、ヒントだぁ! ボーナスステージかなぁ?
いい加減にしろ。
人生オワタの大冒険もしょぼんのアクションもアイワナ系もほぼ積み続けたぼく、こちらも同じく積みを決意。
……なんとかクリアしたわ!
主人公のエリィ、何もしないときのぴょこぴょこした動きがかわいい。地獄みたいなステージの中でその可愛さは一服の清涼剤。
そして死に方が豊富でかわいい。光る玉に触れれば感電するし雪だるまになったり氷の塊になったり服が脱げたり服が脱げたりする。というか死に方で実績が開放される。なんで?
さらに音楽がよい。かわいくて癒し。ゲームの性質上何十回何百回と聞くことになるが、主張しすぎない程度に主張してくれるので嫌にならない。それよりステージが嫌
ゲーム自体はいわゆる死にゲーなのだが、きちんと中間セーブポイントは設置されているのである程度やりやすい。また、残機は無限なので根気よくやればいつかはクリアできる……はず。
ぼくでもクリアできる。
ちなみに最初に出した画像の残機-1180のうち300機くらい最終面で費やした。あのジャンル死ぬほど苦手なんだよなぁ
大体の死にゲーに言えることだが、死んで覚えてクリアを身につけるこのゲーム。エリーの動きの可愛さと音楽の良さでなんとか続けられる。でもステージの同じ場所で100機近く消えたときには流石に心折れてアンインストールしようかと思った。頭ハゲるわ!
音ゲーで『クセがつく』なんて言うが、このゲームでもそういうクセがつくんだなぁと思いました(小学生並の感想)。
ラス面? 最後は義務感だよ義務感。
まあ、一画面100死するような下手マンぼくでも成長はするもので、段々「ここには針がありそうだ」「ここはこうすれば良さそうだ」などなど色々考えられるようになってくる。そうすると、ぼくのプレイするエリィの動きにも段々キレが出てくる。
そして、いっぱい死んだからこそクリアできたときの喜びが半端ない。最後ボス倒した時比喩じゃなく手が震えていた。
クリアのご褒美で一枚絵が見られる(この地獄で一枚なんて割にあわないよ!)のだが、手が震えすぎてスクショしようと思ったら別のボタン押しててスクショできなかった。そういうところだぞ。
ちなみにエリィ、そんなに死んで大丈夫なのか? と思ったらどうやらドMらしい。ドMなら安心だね! これプレイするプレイヤーもドMだろうからお揃いだね!
ゲームクリアした? そっか。
じゃあExステージだ!
こんどは残機30機制限で難易度アップだ!
いい加減にしろ。
これはこれからプレイする人へのアドバイスなんですけど、プレイしていて段々死がおざなりになってくると思うんですが、そうなってくるとプレイもおざなりになるので、一度やめて甘いものでも補給しよう。一人ひとりのエリィの死を大事に!
もっと画像いっぱいいれようと思ったけど久しぶりにプレイしたら全然ダメだったから画像ないよ!
五七五の はじめ五文字の むずかしさ
この記事は「今年プレイしたゲーム Advent Calendar」14日目の記事です。
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この記事は 今年にプレイ したゲーム
十四日目の 記事になります
『五七五オンライン』。
「俳句」
「ルール」
なお、季語の設定は強制されていないので俳句というより川柳。
「文字数」
自由律もサポートされていると考えるかただのガバガバシステムと考えるかは君次第。
『対話』
このゲーム、大体相手に五七五を成立させようとする意思がない。連歌を彷彿させるようなウィットに富んだ言葉の応酬は無だ! でも深夜テンションでやると謎の化学反応感じてゲラゲラ笑っちゃう。
やがて五文字七文字五文字で会話が始まる。唐突に十文字くらいの文投げ込まれることもある。どうした?
……まあ、クソ俳句ジェネレータwith知らない人間コミュニーケーションツールとして遊ぶのには程よいかもしれない。マッチングは割とすぐ出来るし。言葉に言葉を重ねる『俳句』がやりたい? 句会にでも行けばいいんじゃないかな……。
あ、徳を積めるようになったからポイント高いよ(枯山水並の感想)
夢の中でできる十のこと
この記事は「今年プレイしたゲーム Advent Calendar」13日目の記事です。
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明晰夢を見たことがある?
はい
いいえ
分からない
たぶんそう/部分的にそう
たぶん違う/そうでもない
『夢核』
Steamで520円。
夢の中、それも明晰夢の中なら何やっても許される! せっかくだから暴力だ!
暴力!
暴力!
現実……
暴力!
夢の中で暴れる患者たちを暴力で大人しくさせるのだ!
(ストアページより)
舞台は病院。主人公の「そぼこ」が明晰夢を見るところから物語は動き出す。そぼこが出会ったのは謎の人物「いしや」。彼女から同じ夢のなかにいる患者たちをおとなしくするように頼まれる。そして夢にテンションの上がった彼女が選んだ方法は暴力だった。
投げて殴って腹パンで、患者を大人しく(物理)させるのだ!
まず、そぼこを始め、ドットで表現された登場キャラクターたちがみんなかわいい。現実世界では無口無表情なそぼこだが、夢の中ではハイテンションでしゃべるし表情もコロコロ変わる。
ふたりともかわいい。ストーリー自体は短いが各キャラの個性が強いのでみんなかわいい。というか狂ってる
音楽もサイケを醸し出していい。聞いていて飽きないし、ゲーム外で聞きたいならサウンドトラックも用意されている。
背景も独特だ。夢世界はテクスチャの重なりから一周回ってゲラゲラ笑ってしまうような配色など、直接脳をぶん殴ってくるようなものになっている。
現実世界と夢世界が同じ病院を舞台にしているのも非常によい。現実世界の病院は特に個性のない至極普通の病院であり、だからこそ夢の中の異常空間を引き立ててくれる。そしてその差が大きいからこそ、シナリオ上のある一点におけるショックが非常に大きい。
これが、
こうなったりする。なんで?
あとなんで体伸びてんの?
他にも口から水を吐くタイプの患者やぴょんぴょんとんでくるタイプの患者がいる。
なんで?
ゲームは基本的にベルトスクリーンアクションで進行する。ぼくはベルトスクリーンアクションらしいベルトスクリーンアクションはゴールデンアックスくらいしかやったことないので結構新鮮。
そぼこの基本攻撃は殴る・掴み→腹パン・地面→地面に叩きつけるの3つで分かりやすい。特に掴み→地面のコンボはタイミングよく入れると何回も発生してダメージが一気に蓄積するし掴み中は無敵になるのですごくつよい。回数限定のスペシャル攻撃も存在し、全ての敵にダメージを与えられる。ぼくは最後のボススペシャル攻撃のゴリ押しだけで倒しました……
アイテムとして、現実世界で手に入れたものを夢世界に持ち込める。HPの回復や一時的な攻撃力・防御力の上昇など効果は様々。そのあたり回復ゴリ押しなんかもできて初心者でも戦いやすい。
夢世界でHP0になると、現実世界に戻されるだけなので再チャレンジしやすい。また、ステージ内で消費したアイテムは現実世界に戻ると復活しているので、もう一度アイテムを手に入れ直す手間がなくて楽。ステージの難易度も、ある程度の難易度はありつつ「もう少しでクリアできそう」な雰囲気を醸し出しているのでもう一度を狙っていける。
ストーリーに関して詳しくはネタバレになるが、なかなか面白い。あとそぼこがしっかりリバースしてくれるのでいい……。女の子が吐く作品は名作なので……。ストーリー自体は余り長くないが、短いながらしっかりまとまっているので好感が持てる。
あと一応ED分岐があったりする。
ストーリーが終わった? じゃあアーケードモードだ!
アーケードモードはステージごとのHP持ち越し、アイテムは使い切りの3個だけ、スペシャル技は回復しないという地獄設定だ! 難易度がストーリーモードと段違いだぞ!
ストーリーだと簡単すぎるという人にもオススメだ!
ストーリーを楽しめるように難易度は抑えられ、それでいてじっくり取り組める難易度も用意されている。ストーリーや演出なんかもしっかり作ってあるので、PVを見て気になった人には是非ともオススメしたい。
錬金術って難しい
この記事は「今年プレイしたゲーム Advent Calendar」12日目の記事です。
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錬金術、それはモノを作り変える力。
プレイヤーは一人の錬金術の使い手となり、錬金術を操りながらストーリーを進めることになる。
アトリエシリーズだと思った?
お ま た せ
変態クリエイターZachtronicsの変態専用パズルゲーム『Opus Magnum』のお通りだ!
Zachtronicsは、パズルゲームを主に開発しているクリエイター。ここのパズルゲームは、主に2つの操作を必要とする――
・プログラムを組む
・ラインを作る
――以上だ!
このゲームは下の比重が大きい。「変成機関変態機関の間違いでは」と呼ばれる六角形のパネルに材料やアームを配置していくのだ。
しかし、ただ配置するだけでは何も起きない。アームを動かすにはコマンドチップを組み合わせてプログラムを組む必要がある。
アームたちを配置しつつプログラムを組み、プログラムに合わせて微調整を行い、これを繰り返して目的の物質を作り出す……これがこのゲームの内容だ。
これだけ聞くと難しそうに見えるし、実際簡単ではない。しかし、チュートリアルやステップアップがしっかりしているため、ルールや動きを理解するだけなら難しくないだろう。
このゲーム、そして同クリエイターのパズルゲームの特徴として、「解法が無限である」ことが挙げられる。特にこのOpus Magnumではそれが顕著だ。というのも、今作は他のゲームと違って盤面が無限に利用できるのである。
指定されたスペース内に詰め込む必要がないというメリットは、思う以上に大きい。例えば同じパズルでも、
このような解法や、
このように画面に入らないようなものまで色々作れるのだ。
それなら簡単にクリアできる、と思う方もいるだろう。そのために、こんなものが用意されている。
各パズルには、ランキングが存在する。プレイヤーの解法を三つの観点から統計し、自分の解法がどの場所にいるのかを教えてくれるのだ。一度クリアした瞬間から、他のプレイヤーより高いスコアを目指して試行錯誤する終わりなきゲームの始まりだ!
もちろん、スコアに囚われる必要はない。自分の求める美しさを求めて試行錯誤する方向性でも良いのだ。なんといってもこのゲーム、アームや材料や盤面自体が美しい。更に自分の組んだ解法をGIFで出力する機能も兼ね備えている。自分の美しいと思った解法を出力し、無限に動くさまを見て悦に入る……これも立派な楽しみ方だ。
プレイを始めたら最後、あと1サイクル、あと1エリアを巡って眠れない日々が続くだろう。どうせ冬で外に出たくない日が続くなら、家の中でウンウン唸ってみるのも悪くないんじゃないだろうか?
GIF画像いっぱい貼って楽しくなろうと思ったけどうまく読み込んでくれなかった……貼れそうだったらやり直すね……サイズ減らしてもなおアップロードに失敗するGIFの貼り方教えてソフィー先生……